【レポート】AWS Summit Tokyo 2017: [AGC 旭硝子] クラウドで変わる。インフラ・データセンター・組織のありかた #AWSSummit
『AWS Summit Tokyo 2017』が2017年5月30日(火)〜6月2日(金)、グランドプリンスホテル新高輪 品川プリンスホテル アネックスタワーで開催されています。
当エントリでは、Day2 導入事例トラック 2のセッション、「[AGC 旭硝子]クラウドで変わる。インフラ・データセンター・組織のありかた」をレポートしたいと思います。
セッション概要
当セッションの登壇者及び概要は以下の通りです。
セッション概要:
前回の AWS Summit Tokyo 2015 登壇 から 2 年。クラウドで何が変わったか?何が変えられなかったか?を赤裸々に語ります。基幹システム (SAP 含む) の移行状況、クラウド化を契機としたデータセンタリニューアル、果ては内製化を含む組織文化の変化まで。コテコテの製造業がクラウドでどう変われたか、そのすべてをお話します。
セッションレポート
以下、セッションのレポートです。
AGC 旭硝子について
- 1907年創業
- 創業100年を超える
- 1日に1,8000トン、バチカン市国x3個分のガラスを毎日作っている
- 生産量は世界一
スピーカーについて
- 2011年中途入社
- 前職はSIerに8年ほど在籍
- AGCにうつってから6年
- AWS の PSA資格保持
2015年に続く2回目のAWS Summit登壇
- 2015年のAWS Summitで初登壇
- 当時のタイトルは「メインフレームからクラウドへ 〜クラウドで情シス文化を変える〜」
- 当時はAWSをガンガン使っていたわけではなく、これからガンガン使いますよと宣言しただけ
- 2年経ってクラウド化はどう進んだのか?その振り返りから始める
そのふりかえりから、本セッションを始める
AWSクラウド化の進捗
2015年発表当時
- 78インスタンス稼働
- 本番システムはなかった
2017年現在
- 452インスタンス稼働
- 基幹系→376
- 基幹外→76
-
このサーバー台数を多いと思うかは業界による
- ウェブ系であれば、何百、何千台のサーバーを動かしている
- 製造業の基幹として考えると、そこそこの規模といえるのではないか
- 現在は2日に1台位のペースで増えている
まとめ
企画倒れにならずにAWS化が浸透している。
SAP移行について
- AGCでは多くのSAPシステムが稼働している
- 2016年1月に第1号のサービスイン
- 第2号は2017年6月にサービスイン予定
- 残りのSAPも順次移行予定
コストについて
- 2015年当時、AWSクラウド化に伴い、コストが落ちそうな気がすると言っていた
- 実際にコストを削減できたのか?
- SAPはオンプレ時代に比べ3割のコストダウンを達成
- AWS化によりDC費用・運用削減費用含めずにサーバーコストだけの比較で3割の削減
- DCのコストも含めると、削減率は更に増える
AGCのAWS移行戦略
ここからもっとスパイスのきいた話
- 標準化
- DC戦略
- クラウドx情シス
標準化
- AWSの基幹系:376インスタンス
- 62システムがAWS利用中(SAP、Oracleなど)
- 2週間に1回のペースでAWSにシステム移行する意思決定
- 適用業務・利用ソフトウェア・開発保守ベンダー すべてがバラバラ
- 移行対象システムはバラバラだけれども、一定のペースでAWS移行できている
超基幹特化型標準化
AGCの基幹システムのAWS移行方針
- 基幹ではセキュリティが超大事
- AWSをきちんと理解して100%使いこなせる人は、社員はおろかベンダーでも稀
- ガイドライン文書をベンダーに渡す方式はやっていない。
- ガイドラインを一度作成しても、更新されず、古新聞になりがち
- 過去のSIerの経験から、ガイドラインだけでは拘束力が不十分
ガイドラインではなく社内向けAWS利用環境サービス(“Alchemy”)を作成
- AWS ではなく Alchemy を用意しましたた、と社内に展開。
- AWSを生で触らせず、ワンクッション入れる
Alchemy とは?
- AGC 謹製のAWS利用環境
- 1アカウントに全システム集約
- セキュリティに関する設計・設定をユーザにさせない
- ユーザーにはOS以上だけの操作を許可する
- NACL/IGW/サーバー作成などはユーザーができない。
- AWSコンソール作業は基本申請(EC2の起動・停止など限定的な権限だけ許可)
- 申請は昔ながらのExcel
- ユーザーからすると、仮想サーバーが渡され、その上で作業
- アプリ側からすると、オンプレ時代と同じでAWSを意識しなくてすむ
- インフラ管理はAWS上
- AWSサーバー管理はAWSインフラチームが管理する
使えるサービスを基幹で使いそうなものに限定
- EC2
- RDS
- S3
この3つができれば、基幹システムは作れる。
CloudAutomator でバックアップ・起動停止管理を行う
請求
- 請求先が事業部毎
- 関係会社にも請求出来るようにする
- 費用分割作業(請求代行)はアウトソーシング
本社以外の多くの企業が使いたいと言ってくれている
拡散性とクラウドらしさのトレードオフ
- AGCのクラウド移行は、サーバーをAWSに移行しただけ
- 拡張性(クラウドの移行のしやすさ)を優先し、クラウドらしさはあまりない
- 拡張性とクラウドらしさは0,1ではなく、パラメーターの振り方
- AGCはクラウドらしさよりも拡散性に大きくかじをきっている
なぜ拡張性を優先?
- ハードウェア資産を削減したい
- アプリ改修したくても、ハードウェアのリプレース時期に、アプリ改修に合わさざるをえないことも
- アプリ改修を依頼側からすれば、ハードウェアの減価償却はしったことではない
- 資産管理とアプリのライフサイクルを別にしたい
データセンター内のHW資産は減り続けている
クラウド時代に企業のデータセンターはどうあるべきか?
- 情シスは企業のカーストでは下
- データセンターを管理している挟持がある
プレAWS時代
- 社内のインフラの中核はデータセンター
- データセンターがハブ
ポストAWS時代
- DCとAWSやSaaSがつながっている
- 大事なデータがAWSやSaaSにたまっている
- DC の役割はへっている
「データのセンター」はどこ?
- データセンターはもはや「データのセンター」ではない
- 死守すべきはデータセンターではなくクラウドまでのWAN経路
- ネットワーク経路にコストをかけるべき
ネットワークセンター
- ネットワークセンターを利用して,各サービス・拠点とつながるようにした
- 新DCはフロア単位ではなく、ラック単位契約にした
- どんどんAWSに移行するから
- 2016年の6月から稼働
もとのDCはどうなったのか?
- 最後は分電盤だけが残った
まとめ
AWS移行により
- ハードウェアのリプレース
- DCの聖域化
がなくなった
クラウド x 情シス
クライド時代の情シスのあり方
- 「情シス不要論」でもりあがることも
- 「情シス不要論」でGoogle検索すると 41,700件 引っかかる
- 情シスの立場からすると、イラッとするが改めて考え直すと、主張は一理ある
- “情シス不要論”が出たことを情シスは歓迎すべき
Why Software is Eating the world
- もともとネットスケープを開発した Marc Andressenが Wall Street Journal で2011, Aug 20に発表
- https://www.wsj.com/articles/SB10001424053111903480904576512250915629460
- すべての産業がソフトウェアにくわれている
- 業種によらず、ソフトウェア化される
- Uber,AirBnBなど、この予言はだんだん本物らしくなっている
- ソフトウェアで勝てないと、今後は生き残れない雰囲気
- 情シスがやるべきは Change
どうChangeするのか?
- 会社によって変わるべき方向は違う
- AGCはどうしようとしているの?
- →PoCセンター
情シスにPoCセンター機能をインストール
- アイデア→PoC→うまくいったら大規模にシステム化
- アイデア、PoCまでは自社(内製化)
- 契約社員、外注だとコスト・基幹的に難しい
- 外注を使わず自社で素早く何度もやる。
- うまくいけば、そこから先は SIer or 内製
- AGCのような年功序列の会社は SIerと組んだ方がやりやすい
Changeできない3大理由
1.手軽にPoCする環境がない
- AWS が解決
- AWSとDXでつながっている
- 100台のサーバーもすぐに立ち上げられる
2.基幹の仕事が多くて暇がない
- AWS が解決
- HWを消すほうにシフトし
- HWの保守/運用が減る
3.アイデアが無い・開発したこと無い
- AWSを契約してもなんともならない。
- 去年、ちょっとしたバッチプログラム開発をやってみた。
- 基幹のマネージメントばかりをやってきた人に初めて開発をやらせたところ、残念なアウトプット
- 別の会社に開発のお作法のトレーニングをお願いしている
トレーナー付き自社開発
- スプリント形式で実際の開発を行う
- スプリントの管理や開発のヘルプは協力会社にお願いしている
- はじめて3ヶ月たった
- ベンダー管理しかしていなかった人でも、実際にコードを書いて、Gitで修正できるようになった
AWS教育
- 業務・テクノロジーの両方の知識が必要
- 情シスは業務を知っているが、テクノロジーはしらない
- AWSの最低レベルの知識が何かはわからないので、アソシエイト取得をゴールに設定
- トレーニングを協力会社にお願い
- 情シスの20%が取得がゴール
- キャズムの谷で、取得者が20%を超えれば組織の文化が変わるのではないか
クラウドにして何が良かったの?
- 一番いいところは“Speed”
- なぜスピードが重要なのか?
- デジタライゼーションを推進したい
ビジネスに必要なもの
- 技術力
- 環境
- 時間
- 情熱 ← どろくさく、一番重要
情熱は大事
- 「情熱」がもえていられる時間には限りがある
- やりたいことをいつまでも追い続けられる人はレア
- ひらめいた、やりたいと思ったときにすぐ使える(=スピード感のある)インフラ・カルチャーがAWSにはある
- スタートアップとAWSの相性の良さもこのあたり
まとめ
AGCは今後もAWSを使ってビジネスを推進していく。
感想
歴史あるエンタープライズ企業でありながら、時代・価値観の変化に柔軟に対応し、ベンダー任せではなく、情報システム部が主導してシステムのあるべき姿を再定義し、クラウド化の計画と遂行を実践しているのが印象的でした。